
『TAKARA』 執筆のきっかけとは
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めんどくさい授業をなんやらかんやら言いながらその日の全ての課程を終える。部活で1
or1で勝利を収めてから家路についた。
「はい西口君、こんにちわ」
せっかく何もなくして、静かに家に帰れるかと思ったのに、またあの不良グループだ。
「・・・・何」
朝やられてそれが悔しかったのか人数は倍に増えている。人数を増やせば勝てるとでも
思ったのか。中心メンバーの5人は後ろの方に隠れるようにしている。リーダーの木村は
さらにその後ろにいた。俺を殴るには前の奴らを倒してからこいってか?上等。俺は向こ
うが仕掛けてくるまで何もしない。変なことに巻き込まれるのは嫌いだし。最初の一手は
向こうからふっかけてきた。それを当たり前のように避ける。また一人が俺の後ろに回っ
た。そんなに何回も同じ手に引っかかるほど俺もバカじゃない。それをうまくかわすと反対
側に避けた。しかしそこで羽交い締めにされた。相手も同じ手を繰り返してくるほどバカじ
ゃなかったって訳だ。背負い投げをしようにも、力のかなう相手じゃなかった。ここにバス
ケボールがあったら勝てたかもしれねーけど。
「よく手こずらせてくれたじゃないの」
まだ中心メンバーは前に出てこない。最後まで出てこないつもりか。さっきから俺に話し
かけて来るのは、今日だけ雇われたらしい連中ばっかりだ。
「なんか言ったらどーなんだ?」
少しイライラした口調で、前に立ってる奴が近づいてくる。そのままの流れでみぞおちを殴
られた。朝殴られたばっかりの所を殴られるとさすがに痛い。
「くっ・・・・」
もう一発食らって声を上げてしまった。
「お、俺が・・・何したってゆーんだよ・・・」
未だに全く心当たりがない。こいつらとは全く関係がなかった。なのに、俺が一体どこで
何をしたって言うんだ?
「バスケ部1年にしてエース。全国大会出場。期末実力毎回490点以上。抜き打ちテスト
満点。」
後ろの方からその声は聞こえてきた。俺の・・・成績?今俺を殴った奴が横に避けると、
代わりにパーマの男が俺の前に立った。中学生でパーマですか。
どうやらさっきの声の主はこいつらしい。中心メンバーの一人。
「先生たちには特別視されて。いいご身分だなぁ西口君」
それって単なる・・・やきもちじゃぁ・・・?
「勉強もそんなに熱心にやってるようには見えないんだけどなー?」
両手をポケットにつっこんでちょろちょろと俺の周りを歩く。
「・・・・それだけが・・・理由かっ・・・」
なぜかだんだん息苦しくなってきた。・・・殴られた所為・・・?顔に拳を食らった。口の中
に鉄の味が広がった。ああー・・・口切ったな。外も切ったらしく、口の横から血がたらりと
垂れたのが分かった。
「それだけ?よく言ってくれるねー。さすが優等生君がゆう事は違うねぇ~♪」
ヒゥ~と目の前で口笛を吹く。蹴り飛ばしたい衝動に駆られる。少し身体を強く前後に振って
みたが、俺を押さえている手は取れなかった。ゆるまるどころか余計に押さえつける力が
強くなった。そのせいでまた動きが取れなくなる。
「まだまだ反抗する力があるみたいだね」
パーマ男が俺の顔をのぞき込みながらクスクスと笑う。そして、膝で腹を蹴り上げてき
た。「ぐはっ!!」
思ったよりも強い打撃を受けて口から血反吐を吐いた。パーマ男に続いてみんなが俺に
攻撃してくる。捕まえられているせいでどれももろに食らってしまう。スネに腰に腹に背中
に・・・最終的には締め付ける手からは解放されたモノの、その場に倒れ込みよけいに蹴
られたり殴られたりするだけだった。
どれぐらい時間が経ったんだろう・・・。攻撃がやんであいつらが姿を消してからだいぶ長
い間こうしてるような気がする。身体のそこら中が痛くて立てない。起きあがれない。バ
スケを始めて、そんなに柔な鍛え方はしてないはずだった。まだ鍛え方が弱いの
か・・・・。
「ぅっ・・・」
痛みに耐えて立ち上がると、制服は泥だらけ、鞄は中身が散らばり髪の毛にも砂がつき
まくっていた。確か父さんと母さんは夜まで帰ってこない。それまでにアザとこの格好をど
うにかしなければ。痛みに耐えながら残りの家までの道のりをなるべく早足で歩く。ちょう
ど大人の帰宅前の時間でよかった。学生ももうすっかり家に帰ってしまって見あたらな
い。やっとの思いで家に着くと鞄を怪しまれないように適当に置き、自分は脱衣所に入っ
た。洗面台の鏡で自分の顔を見る。顔は何とか『転んだ』で済みそうだ。服を全部脱いで
洗濯機の中に放り込む。あ、制服まで普通に放り込んでしまった。もう洗濯機は水で満た
されていて、動き始めている。母さんが帰ってきたら怒られそうだけどー・・・まあいいか。
タオルを腰に巻いて風呂に入る。鏡で全身を見るとそこら中アザだらけだった。
あーあーひど。髪に付いた砂と泥を丁寧に洗い落としてから脱衣所に出る。念入りに身
体と髪の毛を拭いてからジャージに着替えた。まだ髪の毛をあげるとぱらぱらと砂が落ち
てくる。前髪をゴムで縛ってからソファーに思いっきり座った。まだそこら中が痛い。
バスケ部エース。学力の全校1位。結局妬みからだったわけだ。さっきはさんざん俺が勉
強していないようなことを言われた。失礼な。少なくともみんなの倍は勉強してると思う。
自分で言うのも何だが。自分では今出ている結果は全部今までの積み重ねの分だと思
っている。努力は・・・報われる。癖して、あいつらは妬むだけで努力はしてない。なぜそ
んな奴らにやられなきゃならないんだ。
母さんは買い物から帰ってきて洗濯機の中を見るなり大きい叫び声を上げた。
「リュウ!制服は洗っちゃいけないってあれほど言ったでしょ! 」
そう、一度俺は今回みたいに間違って制服を洗ってしまったことがある。そのときもわざ
わざ買い換えた。小学校の時だ。母さんはそんな俺にぶつぶつ文句を並べながらも、部
屋に入ってくるときにはいつもの笑顔に戻っていた。母さんは人前で怒ることは滅多にな
い。まあ、それが逆に怖いときもあるけど。
「あら?」
部屋に入ってきた母さんは俺の顔を見るなり、手を頬に当てて首をかしげた。
「あなた顔の絆創膏どうしたの・・・?」
やっぱり来た。まあ頬とおでこにしてれば気づかない人はいないと思うけど。
「ああ、これ?学校の帰り道に持ってた鞄のせいで足がもつれて顔から転けたから。思
いっきり顔を擦ってさー」
俺ってバカだろーと言うような口調で軽く母さんに言う。もちろん全部嘘っぱちな出来事
なのだが。いつもドジな俺はこれですんなり話が通った。母さんは気をつけなさいよ、あ
なたっておっちょこちょいなところあるんだから。と少し安心したように言うと買ってきた物
を冷蔵庫の中に詰め始めた。自分からも安堵のため息が出る。話が通らなきゃどうしよう
かと思った。でもまあこの母さんだから通じたのか。
洗ってしまった制服も新しく調達し鞄も何とか自分のためていたお小遣いで買い換えた。
さすがにこれを見せてしまっては転んだんじゃないことが丸わかりだ。
何もかも新品になった状態で学校へ行く。またしても昨日と同じ状況だ。囲まれて立てな
くなるまでぼこぼこにされて。あの日以来、そんなのが毎日のように続いた。日に日に回
数を重ねるごとに、俺に付く傷の数もアザの数も多くなっていく。ついに母さんが本気で
心配し始めた。勘づいてきたのだ。
「リュウ・・・本当は転んだんじゃないでしょう?どうしたの?そのアザ・・・」
冷蔵庫の中から麦茶を飲んでいる時に横で夕飯の準備をしていた母さんが青ざめてこっ
ちを向いていた。昨日より顔のアザがひどくなっている。そんなことは自分でも分かって
いた。
「・・・別に?何もないよ」
にこやかに笑顔を作って何とか母さんの目から逃れた。変な心配は掛けたくない。もし俺
が学校で虐められていると知ったら母さんはどう思うだろう?父さんだってきっと黙っては
いないと思う。だから言えない。自分が虐められてるなんて事は。
しかし隠し通したい気持ちが大きくなるほど、いじめは急速にひどくなっていった。もう殴
る蹴るのレベルじゃない。口ではよく説明出来ないが・・・とにかく普通の中学生がやるよ
うないじめじゃなかった。そんな虐めを受けながらも、部活だけはちゃんと行っていた。こ
れだけ唯一俺を楽にしてくれる。もう全国大会も近い。別に自慢じゃないけど、たぶん俺
がいなくなると、全国優勝は難しい。と思う。だから部活だけは、出なきゃならない。それ
に気づかれないように傷を気にしながらも毎晩父さんとの1or1は欠かさずに練習してい
た。
大会までの一週間、強化練習が入る。この強化練習期間で脱落していく1年生も多いら
しい。しかし、父さんから厳しい指導を受けている俺には軽いモノだった。はず。しかし今
は根っから虐めのせいで神経はそっちに行き、身体はそのせいでくたくただ。部活の練
習について行くのもやっとだった。それに最近胸のあたりが苦しく感じるときがある。たぶ
ん悩みすぎだとは思うけど。・・・ん?悩む?・・・俺が?
日々激しくなっていく虐めに耐えながら毎日を過ごした。まだこのことは誰にも言っていな
い。
「ちょっと西口君、いいかなぁ?」
木村のメンバーの一人が、ある昼休み俺を学校裏に呼び出した。そこには木村を先頭に
して、他のメンバーたちが待ちかまえていた。
「よぉ、西口君。明後日だっけ?全国大会」
木村が嫌みたっぷりにそう言い放った。俺はきつく木村を睨みつける。
「俺に何の用だよ」
「君はまだ分かっていないみたいだね。自分の立場ってもんをよっ」
その言葉と同時に、木村は俺に近寄り、みぞおちを蹴り上げた。俺は痛みのあまりその
場で膝を折った。
「いいんだよぉ?別に。明後日の全国大会に出られなくさせても。それぐらいたやすい事
だから」
それを聞き俺は驚きのあまり目を見開いた。そんなことをされたらたまったもんじゃない。
せっかく念願の全国大会に出れると言うのに、ここで、ぱーにされたら終わりだ。
「それだけは・・・止めてくれ・・・」
「へえ、まだそんなこと言ってられるんだ。じゃーさ、俺たちにこれ以上虐められたく無か
ったらさ、バスケを二度と出来ないようにさせられなかったらさ、おとなしくしててよ。お前
ってちょっと目立ちすぎなんだよっ」
しゃがみ込んだ俺の脇腹に再び蹴りが入った。くっそ・・・・。
「なあ、何とか言ったらどうなんだよ!」
木村は俺の胸元をつかみ上げ怒鳴った。
「・・・・・くっそ・・やろっ・・・・」
その言葉で俺は油に火を注いでしまった。木村は顔を真っ赤にしてカンカンに怒り、思い
っきり俺をコンクリートにたたきつけた。
「ぐはっ・・・!」
そのせいで砂が目に入り、片眼を瞑ったままになってしまった。そこに殴りが入った。さん
ざん蹴られ殴られ、ついに目から生暖かいものが流れ落ちた。涙だ。男なのに涙なん
て・・・。
「・・・かった・・・」
「ん?」
メンバーの一人が俺の前髪をつかみ上げ、自分の方を向かせた。
「わかった・・分かったからもう止めてくれ・・・」
俺の言葉に木村は満足げに微笑んだ。
「じゃあおとなしくしてくれるんだ」
俺は言葉で答える変わりに何度もうなずいた。それに満足したのか、他の奴らを引き連
れ木村は俺の前から去っていった。
「・・・・くっそぉ・・・・」
力が余る限り、俺は地面に拳をたたきつけた。

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