
『TAKARA』 執筆のきっかけとは
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「ただいまー」
「おかえりなさいー」
いつもの場所から母さんの声が聞こえてきた。そのとき側の電話が鳴った。
「リュウーちょっと出てもらえるー?」
「分かったー」
鞄を肩にかけ直し、鳴り響く着信音を黙らせるべく受話器をとった。それを耳に当てる。
「もしもしー」
向こうからの返事が返ってこない。
「もしもしー?」
もしかしたら声が聞こえてないだけかと思い、さっきよりも大きい声で言ってみた。しかし
結果は同じだった。着信は非通知となっている。しばらくそのままでいるとガチャッと向こ
うの受話器が置かれる音がした。
「んだよ、無言電話かー?」
「どーしたのー?」
独り言をぶつぶつ言ってると、母さんがキッチンから顔を出した。
「んーなんか無言電話だった」
「無言電話?そんなこと初めてねー誰かしら?」
「電話番号ミスったとかじゃねーのー?」
「ああ、そのパターンね」
「そうそう」
受話器を置いて母さんが顔を出している部屋に入った。するとまた後ろで電話がなる。
「出られる?」
「…めんど、分かった」
鞄を部屋の入り口から投げてソファーの上に落とすと、また電話に出るため来た道を戻っ
た。
「はい、もしもし西口ですが」
いくら待っても向こうからの返事が返ってこない。2度目の間違い電話か。めんどくさ。向
こうが切る前にこっちから切ってやった。意外にも受話器を置く力が強かったのか、もの
すごい音を立てて元の鞘におさまった。
「なにー?まだ無言電話ー?」
部屋に入ると夕食の準備をしながら母さんが問いかけてきた。
「んーみたい。家の電話そんな似てる番号あるっけ」
「さあー?電話番号なんて限りないからね」
そのときまた電話が鳴った。
「…出なきゃだめ?」
「お願い」
にっこりと笑顔を向けられる。はぁ…結構めんどくさい。だんだん腹が立ってきた。思いっ
きり受話器を取った。
「もしもし!西口ですが!!」
イライラをぶつけて電話に出る。
『んだよーそんなでっけー声出したらびびるじゃねーかよー』
受話器の向こうから聞こえてきた声は萱島だった。
「なんだよ萱島かー」
『えー俺じゃぁわりーかよー』
「うん、悪い」
『何だよそれ』
ははっという笑い声が聞こえてくる。
「で、何の用」
『あ、そうそう。今日なんか木村がお前に用事あるみてーだったけどなんかあったの
か?』「は?木村が?」
…木村って誰だっけ。…ああ、ちょっと風変わりが集まった中心人物の。確か木村…なん
だっけ?
『そうそう木村が。っておめー今木村って誰だ?って思っただろ』
「え?別に?」
あなどれねえー。
『ふうーん。まあ伝えたから。別に木村に伝えてくれって言われた訳じゃねーけど、お前
が帰った後に待ってたからさ。もしかしたらお前が忘れてたんじゃねーかと思って』
「なに、俺の方が忘れてること前提なんだよ」
『いや、別に?んじゃーな』
「おうー」
今日3度目の動作をする。受話器を置いてから再び部屋に戻った。ここの間を何回行き
来してるんだろ俺…。
「また無言電話?」
「違う、萱島からだった」
「へえ、そう」
その話した内容までは聞いてこなかった。木村が俺に用事…?いったいなんだってゆー
んだよ。
次の日、学校へ行く途中、上から何かが落ちてくる気配がした。上を見上げると、視界
が真っ暗になった。反射的に避ける。思い物が落ちた鈍い音がすぐ横でした。
「植木鉢?」
よくドラマであるパターンだ。事故に見せかけて人を殺めようとするありふれた手口。こん
な物に当たったら即お陀仏じゃねーかよ。スピードからしてビルの5階ぐらいの高さから
落とされたらしい。鉢が粉々になって植えられた花が無惨な姿になっている。
「俺は殺されるのか?」
手をポケットに突っ込んで上を見上げる。十階建てのアパートはシーンと静まりかえり、ベ
ランダには顔を出して見る奴もいない。この時俺にはもうすでにわかっていた。誰かが自
分に意図的に貶めようとしていると云うことを。
それからの学校への道のりでは何事もなく、無事玄関に入ることが出来た。スリッパを
下駄箱から出し、履くために下に落とす。すると、カツッと変な音がした。
「…?」
不振に思い、腰を折ってスリッパを拾い上げ、裏を見た。
『バカ』『アホ』・・・まぁよくやりましたな、こんなめんどくさいことを。
スリッパの裏に画鋲で文字が書いてあった。今時女子の虐めでもこんな事しないだろ、
普通。
「根気づぇーなー」
刺さった画鋲も抜かず、スリッパを履くとそのまま教室に行った。教室の入り口に誰かが
立っている。まったく、みんなの通行の邪魔すんじゃねーよ。苛ついているせいか余計に
腹ただしい。
「よぉ、西口」
そう呼び止めたのは木村だった。ふと、その顔を見て、きのうの萱島の電話を思い出す。
「何?」
「ちょっと来てよ」
「…」
男子4~5人の男子が木村を取り囲んでいる。そのまま教室に入れてくれそうになかった
ので、仕方なくついて行くことにした。校舎裏まで連れて行かれる。あーあ、人気のない
ところでこいつらのやることと言えば…。と、その時ちょうど朝の会の始まりのチャイムが
鳴り響いた。
「朝の会、始まるけど」
あくまで冷静に言葉を放つ。それが逆に相手の逆鱗に触れてしまったらしい。顔をゆがめ
ながら木村は笑う。
「調子に乗りやがって。なあ西口君よぉ」
「何で調子こいてんだよ、俺が」
「ははっよく言ってくれちゃうよ」
その言葉と一緒に左側から拳が向かってきた。が、それを軽々避けたため、また相手を
逆上させてしまった。
「っの避けてんじゃねーよっ!!」
次々と飛んでくる。自慢じゃないが自分でも運動神経はいい方だと思う。それら全てを避
けたが、木村の取り巻きが俺の首に手を回し後ろから羽交い締めにした。自由が奪われ
る。それのせいで見事に木村のパンチがみぞおちに食い込んだ。
「…っ!」
まだ耐えられる。
「…んなことして…なんに…なる」
「虐めに理由なんていらねーだろ?なぁ西口君」
前髪を握られて無理矢理顔を上げされられる。今度はみぞおちに膝が飛んできた。それ
をもろに食らう。
「ぐはっ!!」
中の物が出てきちまうだろーが。・・・気持ちわりい。
「画鋲を仕込んでも、無視だし、電話しても動揺しないし植木鉢を落としてもそのままスル
ーだし、スリッパにさしてもスルーで行こうとしてたし?」
…やっぱりこいつらだったのかよ。女々しいな。内容が。
「それでやっぱりちまちま行くより直接かなぁって思ってねぇ?」
そう言いながら髪の毛を引き抜かんばかりに髪から手を離した。
「くっ…」
「悔しかったら反抗すれば?」
みんな楽しそうにケラケラと笑う。あーマジで腹が立ってきた。腹の痛みもこらえ、思いっ
きり腕を振り身をかがめた。都合のよいことに、運良く後ろで羽交い締めにしていた男子
が、思いっきり前に放り出された。これで自由に動ける。
「…来いよ」
少し息を荒げながらそう言った。
「へえ?元気じゃん。俺たちにたてつこうてーの?」
珍しい物でも見るような目つきで俺を見る。
「じゃー遠慮なく行かせてもらうぜ?」
そいつらはにやりと笑うと、次々に俺を襲いに来た。しかし自由になった俺は身軽い。
軽々避けると、それぞれ、一人ずつ倒していった。
「朝の会遅れると俺の担任何かとうるせえから」
最後に木村をぶん殴るとさっさと自分の鞄を拾い、鞄についた砂を払って教室に戻った。
「せんせーすみませんー遅れましたぁー」
遅れてきたことに反省の色を全く見せずに俺は授業中の教室に入った。
「…西口お前な…そういうことはちゃんと先生の前に来て目を合わせて言うもんだろ?」
「そんなん、先生と目あわせたら吐きますよ?俺」
「…失礼な」
先生とのそれだけのやりとりだけで教室中に笑いが起こる。仕方なく机の合間を縫うよう
にして教台の前に立つ先生の前に立った。
「すみませんでしたー遅刻っです」
「理由は」
「腹が痛くてトイレにこもってましたー」
「嘘つきは泥棒の始まりだって親から教えられなかったか?」
やっと先生が手元から俺に視線を移しながら言った。それに対して俺は大声で笑う。
「せんせー今時そんなこと使う奴いませんってー」
「で、本当は」
「はいはい、ねぼーしました。すみません」
「…?お前にしちゃー珍しーな。さっさと目覚まして授業に集中しろ」
何とか説教は逃れられたみたいだ。といっても先生はほとんどあきれかえってしまってい
る。少し傷む腹をばれないように抱えながら席に着いた。

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