
『TAKARA』 執筆のきっかけとは
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「地球が宇宙に誕生し、万物が生まれ、人間がこの世に生まれた頃、我らはまだ存在していなかった・・・・・だが、時が経つにつれ人間は過ちを犯し、罪を作り始めた。神の心と正反対の心を作るようになったのだ。そこから我らが誕生した。最初は人間に宿る神の良心によってすぐに末梢されてしまったが、我らを生み出した愚かな人間に対し、災いを起こし、そして再び罪を犯すのを待った。なぜならその罪が我らを大きく成長させるからだ。そして我らを作った物たちの魂を操り、良心が戻らぬように支配し、迷いの中から永遠に抜け出せないようにするのだ」
良心が戻らないように・・・・?良心ってーのは人を思う気持ちだとか・・・そーゆー事だよな?それが戻らないだって?そんなことが出来るのか?そう、ふと考えた。
教頭や堀・・・・あいつらは・・・良心が戻らないようにされていたって訳か・・・?
「何のためにだ!」
俺がまだ考えている途中に宝が叫んだ。
「何のためだと?我らは宇宙の法則に忠実に従っているだけだ。生まれしものはすべて元へ還るという法則だ。我らは我らを生み出した者の元へと還るだけだ。当然のことをやっているまでだ。人間はこの仕組みを知らずに何万年も同じ事を繰り返し続けている。愚かな生き物だ。人間は頂点まで上り詰めると、感謝や反省をしなくなる。そしてまた同じ過ちを繰り返し、我らを生み出すのだ。我らは人間の退廃していく姿を喜びとし、この現象界に執着し、迷いあえぐ人間の姿を快楽としているのだ。我らの力はもう少しで最大になろうとしている。だが、神はこの愚かな人間を救おうと天の秘密を下したのだ。これはかつて無かったことだ。罪を犯した人間までも救おうとしているのだ。あの水晶を使い人間たちを目覚めさせようとしている。そうなれば我らは罪人の元に戻ることが不可能になってしまう。しかも我らの存在さえ危ぶまれることになる。今、全世界に散らばっている水晶が目覚めるべき者を引き寄せ始めた。その水晶も何百年もの間、あの神社でその時を待っていたのだ。そしてついにあの水晶がお前を引き寄せ始めた」
このくそやろ・・・・長々としゃべりすぎだぼけ。でもまあ、ともかく、今俺の抱えているこの七色に光り輝く水晶はこいつらにとって危険なものであり、俺たちにとってとても大切なものだということは分かった。
あれ・・・・?そう言えば・・・・宝は水晶に触れば、力が得られると言っていた。俺は今その水晶に触っている?じゃあ俺にもあの力が出せると言うのか?
・・・・いや、違う。おそらく宝の言っていたことは、水晶に触るだけでは無いはずだ。俺は徐々にそんなことを感じ始めていた。そしてそっと水晶を下に置いた。どうやらこれが側にある限りは襲われることはないらしい。
天魔は細くて黒い腕を伸ばし、宝の方を指でさしていた。
「だが、それと同時にあの神社に近づき、目覚めてしまう者も現れた」
宝をさしていた指を次は岬の方に向ける。
「最初にあの水晶に触れたのがお前だった。あの神社に近づく者に我らは取り憑き、水晶に近づかせないようにしていたが、お前を阻止することはできなかった。お前に取り憑く鬼魔がいなかったためだ」
なるほど、岬も谷屋みたいに救われたつーわけか。
「あの水晶の力を得る者が現れてしまえば我々の目的が脅かされることになる。だが、幸いなことにお前はすぐにはあ奴と一体化出来なかった。お前は覚醒することはできなかったのだ。救世主はお前では無かった。水晶の力に答えることができなかったのだ。だが、一体になれなかったとしても水晶に触ったのは確かだ。いつ力に目覚めてしまうとも限らん。だからお前を覚醒させないようにするために定期的にあるものを飲ませ続けたのだ」
「え?・・・・私に、何をしたの!」
岬は大声を張り上げた。どうやら本人は身に覚えが無いらしい。
「やはり分からなかったようだな。くっくっく・・・・」
天魔は手を下ろしながら笑った。
「酒だよ。酒は精神の集中を狂わす。正しい判断を損ねされるための一番の毒薬だ。お前たちがお互いに求めても酒が邪魔立てをしていたのだ」
「お酒ですって!私はお酒なんか飲んではいないわ!」
「飲むだけが酒じゃ無い」
「まさか・・・・」
ピンと来たようだった。
「そうとも。微量の酒でもお前たちを狂わすのは訳ない。洋菓子に入れるだけでも効き目はある。そのほかにもチョコレートやジュース、少量だがいろいろな手段で酒の入ったものをお前に持たせ、食べさせた。お前は無邪気に喜んで・・・・くっくっく」
そこまで言うと、天魔は声を上げて笑った。
「じゃあ、僕が岬の家をでてから力が出せなくなったのは、あのティラミスのせいだったのか?」
「やっと気づいたのか?」
「我らはお前が水晶に触れ覚醒しているかどうかを探るために階段上のシャンデリアを落とした」
「何だって?」
「シャンデリアを避けたのは偶然だったかもしれない。だが、この娘の父親の鬼魔を追い出したとき、我々は確信した。お前が救世主だということを」
天魔は口元をつり上げた。へぇ、救世主か。かっこいいじゃねーかよ。妙に宝に突っかかっていきたかったのは俺が救世主を求めていたからなのか?宝といて居心地がよかったのもこいつが救世主だったからなのか?
「水晶に触った者同士はいずれお互いに引き合い始める。だから救世主を捜すために我々はこの娘を見張ったのだ。なぜならばあの水晶は瞬時に覚醒した、救世主であるお前にしか壊せぬからだ」
「何だと?」
「我らはお前を待っていたのだ。救世主となるお前を・・・・」
「そんな・・・」
「だからお前にブランデーの濃度の濃いティラミスを食べさせたのだ。いったんお前を錯乱状態にし、お前の父を利用してこの水晶を壊そうとしたのだ。だが、予想より早く邪魔が入り、失敗に終わった」
宝を見据えていた視線はその横にいる黒沢に移った。
「お前だ。お前も神社に近づき水晶に触ることが出来たようだが、この娘と同様にはじめから一体となる力が無かった。それよりもっと無力だった。酒の力を借りるにも及ばんほどな。なぜならこ奴は目覚めを求めていなかったからだ。だから目覚めた片方が交信しようとしてもお前は気づこうともしなかった。お互い一方通行さ。お互いが真に求め、変えようとする気が無ければ何の変化も起こらない。片方だけが悪あがきをしたところで通じ合うことは無理なのだ。だからお前にはあるビジョンを送り、我らが行動しやすいように動いてもらったのだ。我らが現れるとお前にわかったのはそのせいだ。そしてお前が動き始めるとこの娘も気づき、お前の行動を追ったのだ。お前が動いてくれたおかげで、我々があまり動かなくとも事が上手く運んだ。礼を言うぞ。こうしてお前たちの方から三人揃ってかごに入ってきてくれたのだから。水晶共々お前たちを抹消するときが来たという訳だ」
「くっそー!そうだったのか」
黒沢は拳を握りしめ、天魔を睨みつけた。
「もうすぐこの世は我らの世となる。我らはお前たち人間の生み出した結果なのだ。我らを作り出したすべての人間は苦悩を味わい、死より恐ろしい恐怖を体験することになるであろう」
起こることすべてに偶然はない。それはこういう訳だった訳か。一つ一つの行動に意味はある。それがいい方向であろうと悪い方向であろうと。
「さあ、どうする。お前たちは我を攻撃することは出来ない。お前たちの一番の弱点だ。だが今の世は親族でも殺す世の中だからわからないがな・・・・くくく」
「それもお前たちの仕業じゃないか!」
宝の言う意味も今は分かるような気がする。よく魔が差しただとかなんとか言ってる奴がいるけど、そいつは鬼魔に一瞬乗っ取られ、それを魔が差したと言うのか・・・。
歩み寄る天魔から逃げるようにして、黒沢と宝は後ずさりをする。その手は組もうかどうか迷っているらしく、少し手を挙げた状態で止まっていた。
「止めて・・・・おねがい・・・・」
岬が弱くふるえる。
「では、取引しようではないか。お前の力で水晶を砕け!そうすれば我はこの女から出て行くと約束してやろう」
天魔はいかにも焦っているような仕草をする。
「どうすれば・・・・」
何だ?天魔のやろーは何にそんなに焦っているんだ?怖いものなんてあるのか?
「そうか・・・水晶だ。天魔は水晶に触れない!」
宝は大声を張り上げた。水晶?・・・・ああ、そうか。天魔は神社から洞窟の中に水晶を移動させるとき、わざわざそれを自分でしなかった。それはしなかった、んじゃ無くて、できなかったんだ。俺は自分の足下に転がっている水晶を見た。
「無駄だ!」
今水晶は俺の足下に転がってる・・・。俺に出来ることは・・・これぐらいしかない!
天魔が一瞬ひるんだ隙をねらい、俺は転がっていた水晶をつかみ取り、そのまま、天魔に向かっていった。
「西口!止めろ!」
宝がそう叫んだのが聞こえた。今更・・・おせーよ。
水晶を持っていた俺の手は、岬の母さんの胸に届いた。瞬間、まぶしい光が四方八方に広がった。
「ぎぃいいいい―――」
何度も聞いたことのある声が耳をつんざいた。そして、岬の母さんの中から、でかい渦巻きが舞い上がった。その姿は今までに見てきたような鬼魔とは比べものにならなかった。頭には鬼のような角が左右に二本あり、身体からは数本の足が生えていた。皮膚はただれて紫色、水ぶくれのようなもので覆われ、それは鼻がひん曲がりそうなほどの悪臭を放っていた。顔面から白く目が向き出しになっている。その目で宝たちを睨んだ。
「こしゃくな奴め!」
そのむき出した目が俺の方をじろりと睨んだ。やばい!そう思い逃げようとした瞬間、天魔は俺の方に向かって来た。そして俺を見事に真っ向から貫いた。
「西口――――!」
貫かれた瞬間、味わったことの無い強烈な痛みが走った。身体がだるくて・・・その感覚は苛立った時のように感じて、一人でいるときの悲しいときのようでもあり、嫉妬のようなものでもあり、憧れでもあり、憎しみであり、恨みでもあるような気がした。それが一気に襲ってきたような感覚。俺は駆け寄ってきた宝の腕の中に倒れ込んだ。宝は手を組み、天魔を攻撃した。
「逃がすな!」
宝は俺を抱えながら、窓から出て行く天魔を見、そう叫んだ。
「任せろ!」
黒沢はそう言うと、怒り狂った鬼魔たちと戦いながら部屋を出て行った。
「岬!お母さんを!」
倒れる俺に身を震わせて、ただ呆然としていた岬に宝は叫んだ。それにはっとし、慌ててお母さんを見に行った。
「大丈夫だわ」
「そうか、良かった。君は黒沢を援護してくれ」
岬は抱えてきたお母さんをそっと床に寝かせ、黒沢の後を追った。
俺はあまりの痛みに身を悶えた。
「西口、しっかりしろ!!」
宝はそう言いながら俺を抱え直した。ふと、俺は夢を見た。自分は自分じゃ無くなってて、別の人の身体に乗り移った。それで、不思議な力を使っているのを。
宝が来てから、宝に絡むようになってから、いや、それ前から俺にはいろいろありすぎた。バスケや成績が良くできすぎて、木村たちから虐めを受け、自分で心臓の病を作り逃げ、宝に出会って説教じみた話を聞き、それを理解し・・・・。今思えばこれらが俺の一生分だったような気がする。気がするだけかもしれねーけど。俺反抗してばっかで、髪も何回染めたか覚えてねえし、ピアスだって開けたし、中学生らしい生活してなかった。そんな中で俺は宝のような奴に助けを求めていたんだ。俺を救ってくれるような奴を。俺は無理矢理目をこじ開け、声を絞りだした。
「あ、ああ・・・・・こんな俺でも役に立っただろ・・・・俺も水晶に触ること・・・・ができたぞ・・・」
「西口、しゃべるな!」
傷口を宝が手で押さえた。塞ごうとしているらしい。
宝・・・余分な所に力使うんじゃねーよ・・・
声に出そうとしたが、口がパクパクと動いただけで声にはならなかった。そっか・・俺も終わりか・・・・・。
「お前はまだ大丈夫だ!しっかりしろ!」
だからいらねー所に使うんじゃねーって。まだ天魔は生きんだぞ・・・戦えなくなったらどーするつもりだよ・・・。
何故か俺はまもなく来るであろう、自分の死が怖く無かった。心臓の病気になり、手術をし、もう一度再発したら、俺の命は危ないと言われていた。宣告された日が近づくにつれて、俺は怖くて怖くてたまらなかった。死んだ後はどこに行くのだとか、どうするのだとか、とにかく死に直面することが怖かった。なのに、なのに何で今こんなに落ち着いていられるんだ?恐怖が全く無い。ないというか・・どっちかと言うと恐怖という感覚を忘れてしまっているようだった。
〝魂は死を恐がりはしない〟
その言葉が俺の頭の中に響いた。そっか、魂は次があることを知ってるんだ・・・・。良かったよ、宝に会えて。
「西口!西口!」
俺の声を狂ったように叫び続ける宝の声で俺はもう一度目を開けた。
「お前には・・・・人を癒す力がある・・・・だからきっと多くの人を救えるはずだ・・・・・俺のように苦しむ者を必ず救ってやれ・・・・・約束だぞ」
身体の芯までの力を振り絞って、宝に頼んだ。きっとこれから、宝は俺みたいに病気に苦しむ人や、江藤みたいな奴にたくさん巡り会っていくと思う。その人たちを、俺みたいな気持ちに出来るように、救っていって欲しかった。今までさんざん俺のわがままに付き合わせて来たけど・・・最後のわがままだけは、聞いてくれ。
宝の目から涙が流れ出した。俺なんかのために・・・・泣くんじゃねーよ。お前のおかげで変われた。俺の事は忘れてもかまわない。でも、自分の言葉で人が救えるってーことは忘れるなよ。俺は涙を流す宝にほほえみかけ、目を閉じた。そして最後に、全部の願いを込めて、俺の手を握っている、宝の手を、力強く握った。
「ああ・・・わかった」
宝のそう呟く声を聞き、俺は完全に・・・意識を失った。俺は・・・・死んだ。
もう一度目を開けた。すると、身体が軽い。そうか、俺は元の身体から魂だけ抜け出たんだ。窓の方により、外を見た。黒沢も、岬も・・・・・宝でさえも横たわっていた。なんだ?自分に問いかけなくても分かっていた。俺は宝を迎えに来たのだ。
しかしここで死んでもらう訳にはいかない。だって俺との約束を果たして無いだろ?ほら、手に力を入れて起きあがれよ、お前はまだ大丈夫だから・・・。
起きあがった宝は、苦戦の上、天魔を倒した。そして黒沢と岬をそれぞれ目覚めさせた。「あいつは?西口はどうなった!」
そう黒沢が叫ぶ声が聞こえた。なんだよ、今更俺の事が気になるってか?
救急車とパトカーが到着し、そいつらがみんな外の人たちを運んでいる間に宝たちが3人揃って二階に上がってきた。俺は窓のさんに肘を突き、横からその様子を眺めた。
「西口君・・・・・」
宝はさっきのようにもう一度俺の身体の腹部に手を当てた。ようやく今になって傷口が完全にふさがった。
「君が一番勇敢だったよ」
そう呟いた宝は、また涙をこぼした。だから、俺は涙を流してもらう価値もねーよ。
「君のことを誤解していた。ごめんよ」
岬も俺の身体に近づき、宝の手の上から自分の手ものせた。
「西口君、私も、ずっとあなたを誤解していたわ」
そして岬は宝を見つめる。
「宝君、私にも声が聞こえたわ。気づいたのは西口君と学校であなたたちを待っていた時よ」
宝が軽く微笑んだ。
「あのとき、西口君、私にプロポーズしてきたのよ」
あーあ。簡単にしゃべっちゃったよ。
「また、冗談だと思ったわ。だけど西口君の目で真剣だというのはわかった。私、こんな時にそんな答えは出せないわって言ったの。そしたら彼、少し微笑んで〝宝になら君を譲る〟って言ったわ」
ほんの少しだけ顔を赤らめて言った。
「西口君、本当は宝君に憧れてたのよ。目覚めた宝君に。きっと自分もそのチャンスをつかもうと危険なのを承知で私たちについてきたのよ」
全くその通りだよ。俺は心のどこかで出会ったときからずっと、宝に憧れてきた。自分の言いたいことが言える。したいことが出来る。自分の心に一番素直になれていた宝の事が。どうやらそれは全部岬に見抜かれていたらしい。
「西口は、目覚めたよ。最後はとてもいい顔だった」
宝は俺の身体の頬を撫でた。
「ここにいるのはもう西口じゃないんだ。西口は僕たちのすぐ側で見ているはずだ。これからも僕たちは戦い続けなくちゃいけない。全世界の人を鬼魔から救うために。きっと西口は僕たちに力を貸してくれるだろう」
いいでしょう?お前らが望むなら、ずっと側にいてやるよ。じゃあな、また会うときまで。元気で。

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