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TAKARA

TAKARA西口編
『TAKARA』 執筆のきっかけとは LinkIconこちらへ

10

校舎の横の草の上に座り込んで、じっとしている宝の姿を見つけた。

「・・・・お前、本当に変だよな」

近寄ると、そう声を掛ける。気づくと側に岬もいた。すごく心配そうな顔をしている。

「悪かったよ。もう大丈夫だから安心して」

宝は俺たちに力なく微笑んだ。俺は宝のその行動にただならぬものを感じた。

「どうしたんだ?急に暴れたり、優しくなったり」

いつもは優しい癖して、どこか抜けてるような癖して、時々こういう変な行動をする。

「もういいじゃない。それより西口君、私たちの事はもう、ほっといて」

岬が少しいらだち始めたようだ。その口調にはいらだちがにじみ出ている。しかしその時

のその言葉になぜかいらつかなかった。すんなりと受け止められたのだ。

「ああ、そうだな。もういい加減飽きてきたし」

下に落ちていた石を拾い上げ、弄びながらそう言った。実際にそう感じていたけど。だけ

ど一つだけ言っておきたいことがあった。

「あのときから何か俺、変なんだ。お前が俺の発作を止めた時から気が楽になったと言う

か。お前の話が妙に気になってな」

そう言いながら、手に持っていた石を桜の木に向かって放り投げた。

本音だった。あれから一回も薬を飲んでいない。なのに、一度も発作は起きなかった。そ

れに、少し不思議に思っていただけだ。病院にも行っていないのに、起きないだなんて。

「ま、邪魔者は消えるとするよ」

本当の所、もう少し話を聞かせてもらいたかった。はじめは気に入らなかった。こいつの

話が。しかし、どこで理解が出来ていたのか、それをもう少しだけ、先を聞いてみたいと思

ったんだ。

その場を去った。


 もう日が沈んだと言うのに、部屋の電気も付けず、俺はベッドの上に寝っ転がってい

た。何を考えることもなく、ただずっと天井を見上げていた。

「リュウーご飯よー」

いつもと全く同じ時間に下から母さんの声がかかる。いつもなら無視しているところだ。し

かし勝手に身体が動き、気づけば、階段を下りる途中だった。電気のついている居間に

入ると、少しまぶしさに目を細めた。机の上には懐かしい品がたくさん並んでいる。何ヶ月

ぶりだろう。こうして、父さんと母さんのいるところに顔を出したのは。懐かしい席に腰を下

ろした。母さんが横にいて、父さんが向かい側にいる席。父さんの後ろにはTVがある。

「父さん・・・母さん・・・ごめん」

はっとすると、口は勝手にそんなこと言い始めた。父さんは箸を持つ手を口元で止め、母

さんは茶碗にご飯をつぐ手を止めてしまった。

・・・・こんな事・・・言うつもりなんて全然無かった。そんな言葉さえ、頭の中に無かった。

それなのに。父さんと母さんの顔を見た瞬間、言いたくなったのだ。

「俺・・・・今まで病気になってから好きなことばっかやって・・・父さんや母さんとも話さなく

なって・・・髪染めて、ピアスして・・・さんざん荒れまくってて・・・この2年間父さんや母さ

んの気持ちなんて考えたことも無かった。暇な日は二人でそろって必ず神社にお参りに

行ってくれて、一回も俺の病気から目を背けたこと無かった。俺と・・・・違って・・・」

「リュウ・・急にどうしたの?」

母さんがちゃんと持った茶碗を俺の前に置きながらそう聞いてきた。

「そうだぞ、どうしたんだ?」

急にこんな事言い出した自分の息子に対して、驚きがあるようだ。そりゃそうだ。俺だっ

てこんな事言うなんて思わなかった。

「本当に感謝してるよ・・・また父さんと1or1やりてーな」

少し苦笑いをしながら俺は向かいにいる父さんに話しかけた。きっとこのとき、力なく笑っ

ていたと思う。

「ああ、絶対やってやるよ」

父さんはそんな俺にほほえみかけた。その様子を見ていた母さんも頬を緩めた。久々に

食べた母さんのご飯はおいしかった。そこでふと宝の言葉を思いだした。

『理に反したものをすべて身体に入れないことだ。大半の人はそれで命を縮めている』

理に・・・反したもの・・・・?何だ、それ。そもそも理って何だ?あー・・・あいつ・・難しいこ

と言い過ぎだ。理解しようにも出来やしねえ。

前に鰺の開きが出ていた。それに箸をかける。しかし身は取ってものの、食べる気には

ならなかった。なぜか口まで運ぶ気が失せる。それをそのままにして、手に持っていたご

飯を食べ、野菜炒めの方に手を伸ばした。それをご飯の上に乗せて食べる。

「あら、リュウ、魚食べないの?」

いかにも手を付けた魚を見ながら母さんが心配そうに見てきた。

「・・・・・なんか食べる気しなくてさ」

「そう・・・それならしょうがないわね」

それ以上はもう何も言ってこなかった。横に肉じゃがも置いてある。しかしそれですら食う

気が起こらなかった。結局野菜炒めと米以外何も食べず、夕飯はそれだけですませた。

それから家族3人でTVを見ているうちに、俺は睡魔に襲われ、そのまま居間で寝た。



「リュウ、学校、いく時間よ。起きなさい」

鳥のさえずりと、母さんの明るい声で目を覚ました。

「あー・・・おはよ・・・」

自分がソファーに寝ていたことを思い出す。

「おはよう、シャワー浴びていったら?昨日お風呂入って無いから気持ち悪いんじゃな

い?」

「・・・そーする」

宝に発作を止めてもらった次の日のように身体が軽い。ざっと寝汗を流すと、風呂場を出

て、朝食を食べた。

「行ってきます」

そう言って玄関をでた。心地よい風が俺の頬を撫でていった。いつぶりだろうな、風がこ

んなに気持ちいいなんて感じたのは。登校していくと、珍しく校門のところで岬が待ってい

た。

「また、宝待ち?」

俺は分かり切っていながら、そう話しかけた。

「ええ」

岬はそう短く返事を返すと、俺の方に視線も向けず、ただ前ばっかりを見ていた。

・・・んだよ・・・今話かけてんのは俺だろーが。何でまだ来もしない奴の方ばっかり見て

んだよ・・・。

「お前、そんなに宝の事が気になるのか?」

「え?」

岬は訳の分からないという顔で、やっと俺の方に視線を移した。俺は校門にもたれかか

り両手をポケットに突っ込んだ。

「だから宝の事が好きなのかってきーてんだよ」

そう聞いた瞬間に岬はとまどいの表情を見せた。何、自分では気づかないってか?

「なあ・・・」

話しかけると、不思議そうに俺を見つめた。

「俺さ・・・お前の事好きなんだよ、昔から」

ああ、それでか。それで、宝を気にして毎朝、待っているのを見るたびにもやもやしてや

まなかったんだ。好きだったから。

「そんな冗談・・・・・」

岬は笑って流そうとしたが、俺と目が合って、そう言う訳でもないということが分かったら

しい。ようやく岬も真剣になってくれた。

「こんな時に・・・・そんな答えは出せないわ」

力なく岬は首を横に振った。

「そっか・・・・」

俺は少し微笑み言った。

「宝になら・・・お前をを譲るよ」

そう言うとすぐさま立ち上がりその場を去った。たぶん俺・・・・幼稚園の頃から好きだった

な・・・岬の事。中1までは仲良くて、俺がこんなふうになってから全く話さなくなった。今

まで誰にも渡したくないと思っていた。好きって言う感情に気づいていて訳では無いけ

ど、本能的に彼女は誰にも渡したくなかった。だけど、あいつなら、大丈夫だ。きっと、俺

より岬の事を考えてくれる。

教室に行こうとしたが、岬が校門で待っているということは、ただごとじゃないんだろう。も

しかしたらまたあの黒い化け物が出てくるかもしれない。そんなことを思いながら、俺は

元来た道を引き返した。ちょうど俺が校門まで戻ると、宝と黒沢が岬の所へ来ていた。

「何だ?君たち、お友達になったのか?」

からかい半分で笑いながらそこに近づいた。別にからかいたかった訳じゃねーけど。これ

しか近づく方法、しらねーから。

「早くしないと始まっちゃうよ」

みんな周りを見渡した。もちろん生徒たちは一人たりとも残っていない。なんせ朝の会が

始まるまで残り5分を切ってるからだ。

「早く行こうぜ」

これ以上俺なしで何もさせないと、宝の肩に手を回して、岬から遠ざけて歩いた。

「何そんなに警戒してんだよ、こんな所に宇宙人なんか来たりしないぞ?」

教室に行くまで、妙に周りに気を配っていた、宝にそう冗談をこぼしながら歩いた。

「さてと、一時間目は・・・」

自席にどすんと音を立てて座ると、宝も岬も仕方なさそうに席に着いた。朝の会始まりの

チャイムが鳴ってしばらくたった。しかし、朝の会に来るはずの担任、笠原先生がまだ来

ない。もう一時間目が始まる時間だ。先生が来ないせいもあって、またなんかあったんじ

ゃないかとクラス中が騒ぎ出した。みんな口々に自分の意見を言う。その間を見計らって

か、そのうるさいクラスから宝と岬がこそこそと出て行った。

誰にも気づかれないとでも思ったか?俺はすぐに席を立ち上がり、あんまり目立たないよ

うにして、二人の後を追った。途中見失ったが運良く下から上がってくる二人に出くわし

た。どうやら職員室に確認に行ったみたいだがいないようだった。理科室の方へと足を運

び、岬だけを外に待たせて宝は中に足を踏み入れた。とたん、中からものすごい風が吹

き出てきた。宝の身体が一瞬浮き上がり、そのまま廊下の壁にたたきつけられた。

「宝君!」

そう大声で叫びながら岬は宝の元へと駆け寄った。すぐに体勢を整え、今度は低くして何

とか教室のドアに掴まりそのまま飛び込んで行ってしまった。それを心配に思った岬もそ

れの後を追った。一瞬赤く教室が光った。それに引き寄せられるかのように、俺の足は

走り出し、そのまま理科室の入り口の所まで行った。

「何だ?これは・・・・」

教室の中はもう教室とは思えなかった。中では竜巻が巻き起こり、周りのものを全部巻

き込んでしまっている。

「来るな!」

叫び声が聞こえた方に振り向こうとした瞬間、何かが俺の方に飛んできた。あの谷屋の

口から出ていった黒い霧のような化け物だ!

「うわ―――――!」

今までに出したことの無いような悲鳴を上げ、俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。そのおか

げでその黒い化け物は廊下の壁にぶち当たった。その時、何かが俺の前に立ちはだか

り、そいつから赤い光が出た。顔を見ると黒沢だ。赤い光を押し出すような形で両手を前

に出している。

〝ギィイイ――〟

考えられないほど高い、気味の悪い音が耳をつんざいた。また黒い化け物が今度は黒沢

めがけて数匹が攻撃してきた。しかしそれをまたあの赤い光で倒していく。しかしついに

倒しきれなかった一匹が黒沢の腕を突き抜けていった。

「くっ・・・」

黒沢は突き抜かれた腕を抱え身体を折った。その瞬間をねらい、他の黒い化け物が一

斉に黒沢めがけて来た。次の瞬間、目の前は真っ白な光で覆われ、あまりのまぶしさ

に、俺は目を瞑った。おそるおそる目を開けてみると、さっきまでの竜巻はなく、教室中が

しっかりと見渡せた。

今の光・・・なんだったんだ・・・?

人影が立ち上がったかと思うと、教室のある一角に向けて走り出した。しかしすとんと足

を折り、床に拳をたたきつけた。宝だ。

「ちっきしょう!」

どうやらあそこに捜し物がさっきまではあったようだが、今消えてしまったらしかった。

「三上、大丈夫か・・・・」

俺の前にいた黒沢はまだ腕を押さえながら宝の元へと歩み寄っていった。・・・それにし

ても・・・・。

「何だ・・・今のは・・・・」

立ち上がろうとしたが完全に腰が抜けてしまって立てない。だらしなく尻餅をつき、手を後

ろに突いた。その時ふと横に気配を感じた。

「なっ、何だ?これは!」

いきなり横に現れた陰が大声を出した。・・・・教頭だ。教頭のその大声のせいで、あれよ

あれよという間にたくさんの野次馬の生徒たちが入り口付近に群がった。

俺は唖然としたまま教頭を見上げた。

「先生、僕たちが来たときにはもうこんな状態でした・・・」

教頭の一番近くにいた黒沢が冷静にそういった。もう腕は押さえていない。

「教頭先生、笠原先生が倒れています」

机の陰から宝の声が聞こえた。笠原先生・・こんな所にいたのか。

「おお、一体どうしたんだ!!」

慌てて宝たちの方に近寄っていった。

「笠原先生!気絶しているらしい・・・・。とにかく保健室に運ぼう、誰か手伝ってくれ!」

教頭は一通り笠原先生の容態を確認すると、外に控えていた中島と体育の近藤先生を

呼んだ。

「そこを離れろ!」

大熊は宝を思いっきり睨みつけた。それでひるんだのか、はじめからそのつもりだったの

か、宝たちは3歩ほど後ろに下がり、道を空けた。3人がかりで笠原先生を持ち上げ、こ

っちに向かってきた。俺は尻餅を着いたまま、そのままずって壁際により道を空けた。蹴

られないように。そのまま運び出して、一階にある保健室の方へ笠原先生を運んでいっ

た。

「さあさ、みんなは教室に戻るんだ」

最後に理科室に残っていた男の先生が、野次馬の生徒たちを追い払うように出て行っ

た。黒沢が俺に近づき手を差し出してきた。俺は素直にその手をつかむと、立ち上がっ

た。俺を立ち上がらせると、黒沢は周りをきょろきょろと見た。

「何だ?ここは」

・・・・は?俺はその黒沢の反応にただ口をあんぐりと開けるしか無かった。

「僕はこんなところで何を?」

するとその後に続くように岬も辺りをきょろきょろとみた。

「ここに洞窟が現れたのね」

岬はすぐに状況を理解したらしい。

「ああ」

その言葉に宝は小さくうなずいた。

「でもまた消えてしまった。今度は笠原先生が鬼魔に襲われた」

・・・鬼魔?あのさっきの黒い霧のような化け物の事か?

「黒沢、君に話がある」

宝はそういいながら俺の横と通り過ぎ教室を出た。

「な、何だよ!」

黒沢は全く訳が分かっていない様子で、文句を言いながらも宝の後ろをついて行った。

「たぶんここには警察が来るだろう。学校を出よう」

宝はそう簡単に説明すると、人気のない場所へと黒沢を誘導した。

「何だ?話って」

そうやら相当機嫌を損ねているらしい。苛ついた口調でそう言った。宝は一度短く息をす

ると話し始めた。

「君に聞きたいことがあるんだ」

宝はまっすぐ、真剣な目で黒沢を見た。

「君は公会堂の横の神社に行ったことがあるだろう?」

「え?」

その質問に黒沢が大きく目を見開いた。

「何で・・・そんなこと言わなくちゃいけないんだ」

しかし黒沢は呆れ、帰るとでも言うように、宝たちに背を向けた。

「大事な事なんだ。人の命に関わる。そして君の命にも」

そう言うと黒沢は振り返った。

命だって?こんな遊びみたいな、ゲームみたいなものにこいつらは命を賭けてるのか?

「命?」

「ああ、君は時々、記憶をなくすはずだ」

「え?・・・何で、それを・・・・」

また黒沢は大きく目を見開いた。宝は全てを見透かすような目で黒沢を見つめる。黒沢

の驚き方からして、どうやらこのことは誰にも言っていないようだった。

「その間、君は何をしていたのか知る必要があるんだ。今度もなぜ理科室にいたのかわ

からないだろう。どうして体中に傷があるかということも」

黒沢はたくさんの傷がある手足を見た後に、再び視線を宝に戻した。

「僕は・・・何かをしているのか?」

そう問いかけた黒沢の声は、不安でうわずっていた。

「君はあの神社に行ったはずだ」

一気に黒沢の顔から血の気が引いた。

「それから君の記憶は時々途切れるようになったはずだ」

宝は断言した。その自身ありありの言葉に知らないふりがもう効かないと分かったのか、

少しうつむきしゃべり始めた。

「・・・そうだ。君の言うとおりだ。三月の初めの頃、僕はあの神社に行った。公会堂へ行

った帰りだ。見知らぬ男の人が僕を招いたんだ。僕は興味をそそられ境内の中に入り、

そして社に入った。だがそこからは覚えていない。でも・・・あれは夢だったはずだ。気づ

いたとき、僕は家のベッドで寝ていたんだ」

淡々としゃべっていた声がだんだん震えはじめ、今にも泣き出しそうな表情になった。

「夢じゃないんだ。現実に起きたことだ。僕にも同じ事が起こった」

さっきからこいつらは何を言ってるんだ?公会堂の横の神社って前あの鬼魔ってゆー奴

を初めて見たところの神社の事か?というかそもそも社の中に入っていいもんだろう

か?

「その時、君は神社の中に入り、そして水晶に触ったんだ。そして君の中に他の人格が

現れた。それが君が記憶をなくしているときに現れているんだ」

「え!!」

宝の説明に納得がいかなかったらしい。

「まさか・・・・」

半分小馬鹿にしたような笑い方をした。

「信じられないかもしれないが事実だ。現に僕はそいつと話をした」

「そんな馬鹿な!でたらめを言うな!僕を脅してもムダだぞ!」

強いことを言っている癖して、口はパクついていた。後ずさりを始める。そんな黒沢の手

首を岬がつかんだ。

「私も、同じなの!」

それは思い切った告白のように聞こえた。

「何だそれ。お前ら、何かに取り憑かれてんとちゃうのか?」

記憶が無くて、その間操る人格があるってことは・・やっぱり取り憑かれてんじゃねーか

よ。岬はキッと俺の方を睨むと、ゆっくしとした動作で黒沢から手を離した。

「とにかく信じてくれ、僕には頭の中で声が聞こえるんだ」

「いい加減にしろ!僕には聞こえない!」

何が何でも否定したいようだった。記憶が無いときに、戦っている事や、声の存在を。

「僕はなぜか彼と対話が出来る。でも君たちも本当はそれができるはずなんだ。信じてく

れ!でなきゃ君の記憶が無いときに君は殺されてしまうかもしれないんだ」

宝は思い切った口調で言った。

「殺される?誰にだ?」

「おっ、俺見たぞ!お前、変な黒い化けもんに襲われて殺される寸前だったんだぞ!」

現に戦っている奴より自分の方が知っている。そう思っただけで、少し得意げになってし

まった。

「今、至る所で鬼魔という悪鬼が現れ始めている。それは人々が作り出した悪の心の結

集なんだ。それが人々を襲い始めている。僕がここへ来る前に死んだ子、そしてC組の

行方不明になった子、消防士、そして今日、笠原先生もそれに襲われた。・・・・僕の父さ

んも襲われ、今、助けをまっている」

宝のお父さんが襲われた?どういう事なんだ?

淡々と話をした。それを聞いてつくづく思う。

「嘘みたいな話だな」

えたいのしれない者が人間を襲うだ何て聞いたことがない。それが人々が作り出すだっ

て?そんなもん、人間に完璧な人間はいない、悪の心は少なからず持っているはずだ。

それじゃあ人間がいなくなるまでその鬼魔ってーのは絶滅しねぇってか?

「そんなことを信じると思うのか?いいか、僕は君たちに協力する気は無い!とにかくもう

かまわないでくれ!」

さんざん大声でそう吐き捨てると、黒沢はずかずかと校舎の方へと戻って行ってしまっ

た。「駄目だったみてーだな」

完全に黒沢の姿が見えなくなると、俺は知らぬうちにそんなことを言っていた。今いいこ

とを聞いた。

「西口、このことは黙っていてくれないか?騒ぎが大きくなると動きづらいから」

予想通り、宝は釘を刺した。宝は睨みつけてはいるが、しばらく前のような威圧感は無か

った。

「んじゃ、俺もその戦いに参加してもいいか?」

顔は笑っていたが、俺は宝に負けないぐらい真剣だった。

「馬鹿言え!命に関わるんだぞ!それに君は・・・・・」

まさかと言うような口調で言った後、最後に声のトーンを落としながらいった。

「力がないから足手まといっていう訳か?ならいいよ、明日にはお前たちの噂で学校中

が騒然となるだろうから」

いけないかことだと分かっていた。こんなことやっちゃいけないって事も。だけど、たぶん

こいつらの仲間に入れてもらうにはこれぐらいの事をしなきゃ、無理だ。

「勝手にしろ!」

宝は諦めたように吐き捨てるように言った。

「危険すぎるわ」

岬が必死に首を横に振り否定した。

「仕方がないよ。でもいいか、ゲームとは訳が違う。遊びじゃないんだ」

「わかってるよ」

やっと認められた。これで堂々とこいつらについて行ける。

「ね、まだ洞窟は学校に現れるかしら」

岬が心配そうに、それでも話をずらした。しかし、その質問には宝も力なく首を横に振るし

か無かった。

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